「あたしもついに人妻なんだな」 結婚を来月に控えて少しマリッジブルーになってしまったのか、そんなことをつぶやいてしまった。
なんだか、人妻という言葉は慣れない。
少しエッチな感じさえする。
結婚を控えている旦那さんとの出会いは、ボランティア活動がきっかけだった。
あの大震災の直後で、あたしも、彼も必死に被災地のために駆け回った。
物資が足りないと言われれば、物資がある避難所を探して融通してもらったり、炊き出しをしたりと本当に忙しかった。
当時はものすごくやることがたくさんあって充実していた。
そしてふと落ち着いたときに周りを見渡せば自然と彼があたしのとなりにいたのだ。
震災ボランティアは出会いの宝庫だと良く言われるけれども、本当にそうだと思う。
あたしたちの他にも震災後の出会いで結婚したカップルは何組も知っている。
それだけ、あの極限状態の中を一緒にくぐり抜けた絆というのは本当に大きい。
それがあるからあたしは彼を信頼できるし、彼もあたしと一緒にいたいと思ってくれるのだろう。
ちなみに、あたしたちは交際期間はゼロ。
付き合うとか付き合わないとか言う間もなく自然と2人でいることが多くなって、流れのままにエッチもして、付き合ってないけど結婚するかって話になった。
そして気がつけばあたしは人妻だ。
こんな嘘のような話があるんだなーってしみじみと思う。
震災は本当に大変だったし、つらいことばかりだったけど、唯一彼と出会えたことだけが震災があって良かったことだ。